きものを愉しむ

2024/07/09

夏の京都の祭礼~祇園祭を愉しむ~

いつもゑり善のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただき誠にありがとうございます。
ゑり善の主人 亀井彬です。

今年令和6年は、梅雨入りが昨年と比べて23日も遅い6月21日となりました。
梅雨入り後は、湿度の高い蒸し蒸しとした日々が続いております。

京都の市街地は東山、北山、西山という三方を山に囲まれた盆地。そのため、風が弱くなるという地理的な特徴がございます。
このまとわりつくような暑さを体感すると、府外からお越しになられた方が、「京都駅に降りた瞬間の暑さが独特!」とおっしゃる理由がよくわかります。

さて、そんな暑い夏の京都の風物詩といえば、やはり「祇園祭」です。
「葵祭」・「時代祭」とあわせて京都三大祭と呼ばれている大切な祭。
また,大阪の「天神祭」・東京の「神田祭」と並んで日本三大祭の1つに数えられています。

7月1日の「吉符入」にはじまり、31日の「疫神社夏越祭」まで、1か月にわたって各種の神事や行事が行われていきます。
特に16日の宵山、17日の山鉾巡行は全国的に有名で、四条河原町の交差点で山鉾がゆっくりと向きを変える辻回しは多くの方にとって馴染みのある景色なのではないでしょうか。

■祇園祭が始まった訳…
さて、八坂神社の公式サイトを見ますと、

「古くは、祇園御霊会(ごりょうえ)と呼ばれ、貞観11年(869)に京の都をはじめ日本各地に疫病が流行したとき、勅を奉じて当時の国の数66ヶ国にちなんで66本の矛を立て、祇園社より神泉苑に神輿を送って、災厄の除去を祈ったことにはじまります。」
と書かれております。

長い歴史の中で幾度となく疫病の蔓延を経験してきた日本人。京都の地理的背景によって、暑さと湿気がもたらす疫病に対して、その原因を悪霊や鬼の仕業をみなし、祭礼によって追い出してしまおうという疫病対策が、長い歴史を経て、毎年の恒例行事となったものといえます。

記憶に新しい新型コロナウイルスの蔓延があった時にも、2020年・2021年の2年間が開催できなかった山鉾巡行について、2022年は全国的にも早い段階で実施が決定され、そのニュースが京都の街を明るくしたことを鮮明に記憶しております。

こうした歴史的背景に触れてみると、疫病に怯え守りを固めるだけでなく、祭礼という形で、多くの方の気持ちを結集させて、悪霊や鬼を追い出す!という攻めの気持ちが祇園祭を支えているように感じます。

■祇園祭の愉しみ方
そんな祇園祭の愉しみ方を今回はご紹介いたします。
京都の夏は暑くて… 人が多くて…
というお気持ちもとってもよくわかりますが、やはり実際に見て味わうことで生まれる感動はひとしお。
京都の街に繰り出して、夏を存分に愉しむ(できればお着物で…)きっかけになりましたら幸いです。

<鉾・曳山を愉しむ>
祇園祭の見どころのひとつが鉾と曳山。
前祭では、7月10日から14日にかけて、『山・鉾建て』が様々なところで始まります。

昔ながらの技法で組み立てられていく光景はどれだけ見ていても飽きません。
山鉾の本体は重量を支えるために、材木を組み合わせて作られており、木材は「縄がらみ」と呼ばれる方法で縄を巻き付けて固定されています。こうした構造を支える武骨な景色?もこの時にしか見れないものといえます。

丁寧に建てられた鉾や曳山も、巡行が終わると、山鉾は各山鉾町に戻り、すぐに解体されます。
毎年毎年、繰り返し使われるものだからこそ、長く使えるように、組み立てやすいように、また解体しやすいようにと、先人たちが積み上げてきた工夫を至る所から感じ取ることができます。

山鉾ひとつひとつにはそれぞれの特徴があります。
鉾の真木(しんぎ)や、山の真松(しんまつ)など、それぞれの見どころを「名所(などころ)」というようです。
特に山鉾本体を覆う染織品や金具は懸装品(けそうひん)として呼ばれ、1年にこの時しか見ることのできない貴重なもの。

遥か古の舶来の段通や、著名な画家の方の下絵を活かした綴錦など、遠目で見ても、また近くによって見ても、毎年新たな発見や感動がございます。1年に1度、京都の最もハレの日に、最もハレな場で、美しい物で多くの方を驚かそう、愉しんでもらおうという町衆の情熱を感じます。

美しい雄大な山鉾をご覧いただけるのは、12日から始まる曳初め(ひきぞめ)も含めて、17日の山鉾巡行まで。
日中にご覧になるのもよいですが、朝の比較的涼しい時間や、夜の暗がりに映る景色もおすすめです。

<祇園囃子>
暑い夏の夜に響く「コンチキチン♪」の音色。この音が聞こえてくると祇園祭の近づきを感じます。
お囃子のお稽古それぞれの鉾町で行われており、よくよく聞くと、鉾によって違いがあることが分かります。
シーンによって曲やテンポが変わったりと、各山鉾でそれぞれ約30曲とかなり多くのレパートリーがあるようです。

祇園囃子を作り出しているのは、3つの楽器。
鼓(締め太鼓)・笛(能菅)・鉦(摺り鉦)の3つで構成されており、鉾の上で能や狂言を演じたことの名残ともいわれております。
鉦方は少年期から稽古をはじめ、成人に達して太鼓方や笛方になっていかれます。

先述したように祇園祭は疫病退散祈願のお祭りです。
その中でもお囃子は、疫病のもととされる悪霊をおびき寄せる為の重要な役割も担っていると伺ったことがございます。
お囃子を賑やかに奏でることで悪霊たちを誘い、楽しい雰囲気に酔わせたままその日のうちに鉾町へ持ち帰り、蔵に封じ込めてしまうのだとか。
こうした少しコミカルでユーモラス?ともとれるような考えにふれると、祭りの様々な側面が見えてくるように思います。
今では、Youtubeなどでもこうしたお囃子が気軽に聞こえるようになっておりますので、是非ご自宅でも祇園祭のムードを愉しんでみては…囃子方の熱のこもった迫力ある演奏が、祭りの気分を高めてくれます。

<粽(ちまき)>
小さい頃は、夏になると大人たちが話し出す「ちまき」という言葉に、甘いものが食べられると思ったものです。
ご存じの通り、祇園祭の「ちまき」は食べる物ではなく、目に入りやすい玄関や門などに掲げて、疫病を免れるための目印となります。

「昔、素戔嗚尊(すさのおのみこと)が旅中に貧しい蘇民将来(そみんしょうらい)の家に、一泊の宿と心のこもったおもてなしを受けました。そのお礼に…と蘇民将来の子孫には疫病の災いを免れさせると約束をして、その目印として茅の輪を腰につけさせました。」
というエピソードが粽の起こりとされております。

毎年この祇園祭の時に購入をして、翌年に新しい粽に取り換える。
というのが風習ですが、近年ではこの粽づくりにおいても、担い手が不足したり、材料の確保が難しくなったりというお話を伺います。
山鉾にてご販売されているものになりますが、場所や時間によっては手に入らないということもあるようです。
こうしたところからも、伝統を継承していくことの大変さを感じさせられます。

長刀鉾などオンラインでのご販売もされているところもございますので、どうかお問い合わせになってくださいませ。

山や鉾で販売される粽・護符には、通常の厄除けのほか、由来に合わせた色々なご利益があります。
安産祈願や盗難除け、夜泣き封じや勝運向上、雷除けや、迷子除けなどなど。
自分に合ったご利益を目当てに山鉾めぐりに行ってみる、というのも愉しいですね。

<ゑり善で待ち合わせ>
さて、今回は祇園祭の愉しみ方を3つだけご紹介させていただきました。

毎年、毎日行っても新しい気付きがあるという奥の深い祇園祭。
是非暑い夏を乗り切るためにもお近くでご覧になってはいかがでしょうか。

祇園祭には浴衣や麻の着物などがぴったりです。
汗をかいた後に、綿や麻が汗をすってくれる時のなんともいえない涼しさと、袖を風が通りぬける感覚は着物ならではの心地よさです。

どうか折角の機会ですので、夏の着物に袖を通して、お出かけしてみませんか。
「ゑり善で待ち合わせ」ということで、是非、祇園祭の待ち合わせや、ご休憩に、四条本店をお使いになってくださいませ。

少しは涼しく、一息つく場所にしていただけましたら幸いです。
皆様にお会いできますことを愉しみにいたしております。

祇園祭の期間中は「掘出し市」を開催中です!

—————————————————————————

SALE 掘出し市
開催日時
 令和6年7月10日(水)〜14日(日) 午前10時~午後6時
会場
 京都四条本店 〒600-8002 京都市下京区四条河原町御旅町49 (→MAP
出展作品
 20~60%OFF  ※当店通常価格より
  振袖・留袖・色留袖・訪問着・付下げ・小紋・色無地・各種織物・男物各種
  袋帯・なごや帯・袋なごや帯・染帯・長襦袢・帯締め・帯揚げ・和装小物・他

—————————————————————————

 

ゑり善 亀井彬

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」の代表取締役社長として働く「亀井彬」です。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできればと思い、日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。