きものを愉しむ

2024/09/11

染帯のすすめ

夏の暑さが長引くこの頃ですが皆様お元気でお過ごしでしょうか。
いつもご覧いただきありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

今週末は京都本店にて秋の新作発表の会、「双美展」を開催いたします。
七五三やはたちのハレ着といった節目の祝い着に加え、染帯も特集させていただきます。

「染帯」といえば皆様はどのような印象をお持ちでしょうか。

普段着に合わせるもの…?
着物を一通りそろえた人が挑戦する、上級者向けの帯…?
季節の柄が多く、短い期間しか締めることができない…?

そんなことはありません。実は染帯は汎用性が高く、様々な場面でお使いいただける帯なのです。

今回は京都本店の双美展にさきがけ、染帯の愉しみ方をコーディネートとともにご紹介してまいります。
少しでも染帯を身近に感じていただけましたら幸いです。

 

~染帯とは~

帯の種類は代表的なものとして袋帯、なごや帯、袋なごや帯がございます。
柄の雰囲気にもよるので絶対に、とは言い切れませんがざっくり分けると袋帯が一番格の高いフォーマルなもの、なごや帯は準フォーマルからおしゃれもの、袋なごや帯はおしゃれ向けの帯です。

染帯はいわゆる「染めのなごや帯」です。白生地に柄を描き、染色していきます。
帯は染めより織りのほうが格が高いといわれますので、そこから考えると確かに染帯はおしゃれ向きの帯といえるでしょう。
ですから合わせるならば小紋や紬など、カジュアルな着物であれば格としては問題なくお召しいただけます。
しかしそれだけでなくフォーマル着物の入り口、色無地と合わせることもできます。

また柄ゆきに関して、季節のお花などが多くて限られた期間でしか締めることができない、という印象を持たれている方も多いと思います。
染帯、と一口にいっても柄ゆきは季節のものから幾何学的なものまで描かれていたり、染めだけでなく刺繍などの加工が施されていたり、生地も代表的な塩瀬と呼ばれる生地から紬の生地まであったりと様々です。

続いてはそんな染帯のいろいろをお伝えしながら、コーディネートをご紹介していきます。

 

~コーディネートのご紹介~

〈季節感の演出〉

冬木立と雪の結晶の染帯、グレー地小紋

まずは染帯の代表的なイメージでもある季節ものとしての愉しみ方。
Instagramでは秋の染帯を使ったコーディネートをご紹介しておりますので、こちらでは冬のコーディネートをご紹介いたします。

縮緬地に冬木立と雪の結晶が描かれた染帯を小紋に合わせました。
色合わせも意識しておりますが、この帯と合わせると小紋の柄が道のように見えてきませんか?
雪の降るなか森の奥へと足を踏み入れていく、そんな童話の世界のような一場面を想像いたしました。
コーディネートで物語性を生み出す、そういった合わせ方もひとつではないかと思っております。

 

〈色無地と合わせて準フォーマルに〉
紫地金彩の染帯、藤色色無地

染帯の前柄

伝統工芸士 荒木泰博氏の染帯を色無地に合わせました。
濃い紫色の染帯と藤色の色無地で、同系色の上品な味わいに。
落ち着きすぎないよう、帯締めと帯上は紫色と相性の良いクリーム色を合わせました。
色無地自体も袋帯からなごや帯、このように染帯まで幅広くコーディネートをお楽しみいただけるお着物です。

荒木氏の金彩は以前のブログでもご紹介させていただいた通り、立体感のある盛り上げ技法が特に目を引きます。色無地と合わせるとフォーマル感のある装いの完成です。
ちょっとしたお茶会などにお出かけしてみてはいかがでしょう。
帯のお柄は「ギリシャ紋」。季節問わずお楽しみいただけます。

 

【おまけ話】

余談ですが入社したての頃の私が抱いた疑問に、「染帯はおしゃれものの帯だけれど金が入っている場合格が高くなるのか、その場合どのような着物と合わせるのが良いのか」といったものがありました。
ただいまご紹介したように色無地に合わせる以外にも、金彩が使われている染帯は大島紬などの上等な紬に合わせると粋だと教わりました。
染帯自体がどちらかといえばおしゃれものという前提があってこそですが、金が入っているからといって必ずしもフォーマルもの扱いになるというわけではないと学びました。

 

〈素材を愉しむ〉
池深雪染帯、クリーム地木立の小紋

最後は生地そのものに注目してみます。
こちらは型絵染作家 池深雪氏の作品です。
見ているだけで楽しくなるような柄が描かれているのは節の目立つ紬の生地。
柄のカジュアルさに加えてぐっとおしゃれさが増しています。
この染帯の題名は「うらら」。クリーム色の小紋と合わせて春の訪れをイメージしました。
先ほどご紹介したフォーマル感のある装いとは打って変わって、普段着におすすめしたいコーディネート。
紬地など、おしゃれさの強い染帯は総柄小紋や紬にぴったりです。

 

このように上品な合わせ方から粋な合わせ方まで、ご用途に合わせて幅広くお召しいただけるのが染帯です。

3パターン取り上げさせていただきましたが、ここでご紹介させていただいたのはあくまで私好みのコーディネートです。
お着物と帯の柄や大きさはかぶらないほうが良い、などといった多少のルールはありますが、お着物のコーディネートは格さえ合っていれば基本的に自由です。
ゑり善のコーディネートは「ゑり善好み」と呼ばれますが、その中でも販売員によって個性が出ます。
好きな雰囲気やこだわりポイントの違いを知っていくのもお着物の愉しみの一つではないかと思います。
そうは言いつつもゑり善社員はお客様の好みに合わせたご提案ができるよう日々邁進しておりますので、お客様の「好み」と「似合う」をよりつきつめる、または知っていくお手伝いができましたら幸いです。

商品紹介のページでも染帯をご紹介しております。
双美展ではより多くの種類がご覧いただけますので、ご都合よろしければぜひ一度足をお運びくださいませ。

本店営業・久保田真帆

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」の代表取締役社長として働く「亀井彬」です。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできればと思い、日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。