気温差の大きな季節、”うすもの”で着物を守る
いつも弊社のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ゑり善の主人、亀井彬でございます。
三寒四温とは本当によく言ったもので…京都の街では暖かい日差しを感じる日があったかと思うと、コートが手放せないような日もあって。毎年のことながら、この繰り返しの中で春を迎えていく。だからこそ春が待ち遠しい想いになるのだと実感させられます。こうした意味でもこの時期はやはり気温の変化は気になる頃、同じ3月でも上旬と下旬ではかなり着姿に変化がみられる月ともいえます。
便利になった今では、気温のデータは気象庁のHPからダウンロードができ、都道府県と地点まで選んで見ることができます。少し寄り道ではございますが、試しに記録が残っている1881年から20年毎で日平均気温の月平均値の気温を見てみると、次にようになっておりました。
<京都(京都府) 日平均気温の月平均値(℃)>
□ 1881年 | 4.7 ℃
□ 1901年 | 5.2 ℃
□ 1921年 | 5.3 ℃
□ 1941年 | 7.7 ℃
□ 1961年 | 8.0 ℃
□ 1981年 | 8.3 ℃
□ 2001年 | 8.6 ℃
□ 2021年 | 11.6 ℃
※ 2024年 | 8.7 ℃
2024年と1881年を比較するとこの143年で気温は4℃上がっております。
また2021年の前後は特に3月の気温が高くなっているのが気になるところです。
ちなみに、4月の同じデータを比較すると…
■ 1881年 | 4.7 ℃(3月)→→→ 11.7 ℃(4月) + 7℃
■ 1901年 | 5.2 ℃(3月)→→→ 13.2 ℃(4月) + 8℃
■ 1921年 | 5.3 ℃(3月)→→→ 13.2 ℃(4月) + 7.9℃
■ 1941年 | 7.7 ℃(3月)→→→ 11.8 ℃(4月) + 4.1℃
■ 1961年 | 8.0 ℃(3月)→→→ 14.1 ℃(4月) + 6.1℃
■ 1981年 | 8.3 ℃(3月)→→→ 13.5 ℃(4月) + 5.2℃
■ 2001年 | 8.6 ℃(3月)→→→ 14.7 ℃(4月) + 6.1℃
■ 2021年 | 11.6 ℃(3月)→→→ 14.8 ℃(4月) + 3.2℃
※ 2024年 | 8.7 ℃(3月)→→→ 17.6 ℃(4月) + 8.9℃
こうみてみるとこの3月と4月の2か月の間でかなり気温の変化がうまれていることがよくわかります。肌寒い日もあれば、暑い日もあるこの季節には、お着物をお召しになる際は、精度を増している気象予報が欠かせなくなってきております。
とはいえ、その上で、きものにおいては「体感」はとても重要。その場の格式、ご出席される立場に合わせた着こなしと、ご普段着であれば気候を鑑みながらお召し物をお選びいただけましたらと思います。
この季節に応じた着こなしは、答えのないものだからこそ、悩まれるものかと思います。どうかそんな時は私どもにもお気軽にご相談くださいませ。少しでもご判断のお手伝いができればと存じます。
さて、すでにご案内させていただいておりますが、今週から双美展を開催いたします。
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双美展 -春の新作発表会-
<同時開催>
ゑり善好み 振袖展
ずっと大切にしたい一枚との出会い
<特集>
うすものコート・羽織
~透け感で涼やかに~
〇京都本店
令和7年3月7日(金)〜9日(日) 午前10時~午後6時
〇銀座店
令和7年3月13日(木)〜15日(日) 午前10時~午後6時
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本日は特集となっております、このうすものコート・羽織の中から、毎年ご好評いただいている「グリスターコート」について少しご紹介をさせていただけましたらと存じます。レースのコートというお言葉でも知られているアイテムです。
■着姿を彩る「コート」と「羽織」
お着物姿に帯を合わせた、着こなしのことを、「帯付き(おびつき)」と申します。
お出かけの際には、その上に、防寒の意味を込めてコートを重ねる。
あるいは少しオシャレに羽織を纏う。
羽織を着て、コートをお召しになる方もおられます。
このようにして、道中のお着物姿は完成してまいります。
よくご質問いただくコートと羽織の違いについては、
「コート」はあくまでも道中にお召しになるもの、お席に入るまでの移動中の衣服になります。
ホテルでの会食の際には、クロークで上着を預けるのと同じですね。
一方で「羽織」は洋服で言えば、ジャケットやカーディガンのようなもの。
つまりお席に入ってもそのまま着ておいてもよいというものになります。
男性のお着物では羽織を着ている方がより礼装となりますのは、羽織の由来が戦国時代の「胴服」にあるからと知ると納得です。
■”うすもの”とは?その3つの特徴
さて、そのようなコートや羽織ですが、春から初夏、夏にかけて暑さの出てくる頃に羽織ることができるものがあるということをご紹介させていただきます。
冒頭で記載した通り、季節の大きな変わり目でもあるこの時期ならではの楽しいアイテムです。
まず特徴の1つ目としては、一目でわかる特徴である「透け感」です。
季節にぴったりの涼やかさを見た目から感じることができる事。
うすい色、濃い色、色合いは様々ございますが、いずれにしてもその上品な透け感は見る人に季節の移ろいを感じさせます。
また2つ目としては、透け感があるからこそ、際立つのがその「柄行き」です。
浮かびたつような凛とした柄の表情はお出掛けの気持ちを高めてくれます。
そして、実際に触れて確かめてみていただきたいものの一つがその独特な風合い。
軽やかでありながらも、くしゃっとならないようなハリのある風合いは、着用する上においても非常に重要な効果をもたらします。
■うすものの生地のこだわり「グリスターコート」の魅力
お写真でご紹介しているこの生地は、薄手の透けるシルク・オーガンジーに刺繍を施した生地になります。
オーガンジーとは細い糸を使った平織の生地のことを指します。こちらの織物はシルクで織られており、精練という加工を行わずにセリシン成分を残すことで、適度なハリが生まれています。
この独特のハリが見た目の軽やかさを生みだしています。羽織った時の、重さを感じない風合いにはこのような工夫が隠されているのです。
うすもののコートや羽織は別名「塵除け」とも呼ばれます。
比較的うすく透明度のある色合いの着物や帯でのお出かけが多くなるこの季節。
言葉の通り、大切なお着物や帯を外の塵や汚れ、スレなどから守るという重要な役割も兼ね備えたものでなければなりません。
「大切な着物を守る」という役割に耐えうる強度がこうした工程から生まれています。
そして、古典にもモダンにも対応ができる多彩な文様は、刺繍によって施されております。
その柄は年によってご紹介するものが変わります。
いずれも軽やかに…そしてオシャレに…
洗練されたデザインは色味を選ばず、また合わせるお着物の柄行きにも調和します。
異なる柄のお品物をご用意しておりますので、是非その表情もお楽しみいただけましたらと存じます。
こだわりの生地、こだわりの柄に出会うと、色にもこだわりたくなるもの。
私たちの方で色を決めて染め上げているものもございますが、その時に白生地があれば、お客様と共に色をお選びいただくことも承っております。
夏らしく涼やかな「青」
春らしく優し気な「桜」
品よく目を惹く「鶸」
透け感が際立つ「黒」
など、生地の見本を参考にしながらお好みの色合いを選んでみるのも楽しみの一つです。
中には”白”そのままでお仕立てされたお方も。
■コートにするか?羽織にするか?
生地を選ばれた方が悩まれることの一つが「コート」にするか「羽織」にするか、ということ。
それは道中で着る物とされるのか、お席でもきておかれるものにするか。
というご判断基準でお選びになられるとよいかと思います。
あくまでも私の見ている範囲ではございますが、入社した10年前くらいはコートにされる方が大多数でしたが、今では街中でも羽織としてお召しの方も多く、少しずつお羽織としてのご要望も増えてきているように思います。
どちらも異なるメリットがございますので、ご着用のイメージに合わせてご相談いただけましたらと存じます。
着物姿でのお出かけが増える季節。是非素敵な【着物を守るための1枚】に出会ってみませんか?
最後までご覧いただきまして誠にありがとうございました。
皆様のお着物での愉しみのお役に立てておりましたら幸いでございます。
ゑり善 亀井彬