きものを愉しむ

2024/11/01

店頭に来年の干支小物が並びだすと、今年もあと2か月か…としみじみ感じるようになりました。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

さて、前回のブログでは黒留袖についてご紹介いたしました。
通常“留袖”と言えば黒留袖のことをさすのですが、黒留袖とは色留袖と区別するために呼ばれる場合が多いです。

色留袖はどんな場面で着たらいいの?というお声をよく耳にします。
一番に思いつくのは叙勲や結婚式などでしょうか。
そうはいってもそのような機会がなかなかなく、お家にある色留袖を着たくても着られない…といった方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんね。

お着物の中でもハードルを感じられてる方が多いように見受けられる色留袖。
実際は紋の入れ方などによって様々なご用途でお召しになることができるため、もっと身近に感じていただける種類のお着物なのです。

今回は紋の数ごとに場面を想定し、コーディネートとともにご着用シーンを紹介していきたいと思います。

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2024/10/18

いつもゑり善のブログ”きものを愉しむ”をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
ゑり善の亀井彬でございます。

私たちゑり善は、天正12年、1584年に京染屋として商いを始め、襟地商(えりじしょう)としてのお手伝いをする中で、戦後からきもの全般を扱うようになりました。440年という歴史の中で、きもの自体は大きく形は変わらない中でも、様々な変化があって今に至ります。それは生活スタイルの変化によるものも大きく、その時代その時代で求められてきたものが変わってきた歴史でもございます。

今回は私たちが大切にお取り扱いを続けてきているお着物、”黒留袖”について、黒染めの歴史を中心にご紹介をさせていただきます。
特に近年ではご着用の機会は決して多いとはいえないお着物かもしれませんが、”黒”という色を活かした美しいお着物の代表格ともいえる黒留袖は、私たちにとっても大切なお品物の一つです。

■針も通りにくい黒
黒染めの歴史は古く、高貴な装束や法服などに用いられてまいりました。
もっとも古いと考えられる方法は墨を生地に付着させる方法であり、平安時代ごろから広く行われてきたとされています。
中世になると多くの武家が、競って黒の紋服を着用したと記されております。その理由は、”黒”というものが特に高尚優美であるという見た目だけでなく、羽二重や絹類を当時の檳榔子染で染め上げると、針も通りにくい程に強くなって、刃も容易に通らなくなった…という護身用という実用の意味もあったようです。

紋付や黒留袖など式服としての着物を考えると、多くの場合はその地色は黒に染められています。
こうした黒を染める仕事のことを黒染業といい、その他の色を染めるお仕事とは、別の業種として表現されるほど、黒は特殊な染の一つとされていました。

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2024/09/29

いつもゑり善のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。ゑり善の亀井彬です。

立秋をすぎ、10月を目前にして、ようやく暑さもひと段落となり、過ごしやすい季節に入りました。
毎年夏から秋にかけては、大切な家族の行事である七五三のご相談事をお伺いしながら、10月や11月のお参りに向けてお手伝いをさせていただきます。夏の間に身長もそして心もご成長なさったお子様方のかわいらしいお着物姿、また凛々しい袴姿を拝見させていただけることは私たちの喜びの一つです。当日が良いお天気になり、想い出に残る素晴らしいお詣りになりますようお祈りする日々でございます。

さて、春と秋(3月と9月)の2回家庭画報さんから発刊されている きものSalonさん は多くのきもの好きの方から愛されているきもの雑誌の一つです。様々な切り口からきものの愉しみや深みを教えていただける私たちにとっても参考になるものとなっております。

そんな、きものSalonさんで、毎号「京のほんまもん」と題して、着物の技を活かしたほんまもんを辿る記事をご一緒に作らせていただいております。2024年・2025年の秋冬号では「京鹿の子絞り」をテーマとして、伝えたい技を見つめ直す機会を頂戴することとなりました。今回はその取材の際のお話も含めて、京鹿の子絞りをご紹介させていただきます。

■京鹿の子絞りとは
古くから伝わる染の技法である「絞り染め」は決して日本だけのものではありません。世界中でこの技法は使われており、今でもその当時の様子を伝える染織品が数多く残っております。しかし、日本ほど多様な展開と発展を遂げている場所はありません。少なくとも奈良時代からその技術が脈々と伝えられてきている国は他にはないといえます。

絞り染めは様々なシーンで目にするものでした。
・ハレの日を彩る総絞りの振袖や訪問着
・京都の南座、顔見世興行では多くの方がお召しになっていたという黒羽織
・夏を涼やかに楽しむおしゃれな浴衣
・細かな細工が目に留まる帯上や長襦袢、半衿
・日常で使う風呂敷 などなど。

今では和装だけではなく、洋装やバッグ、生活を彩る和雑貨としてなど、様々なものに広く利用され、愛用されています。こうした状況を見つめなおすと、絞り染めは日本の染織工芸を代表するものといえるのではないでしょうか。

絞り染めの中でも「鹿の子」と呼ばれる「疋田絞り」は、小鹿の背中に見られる白いまだら模様に似ていることから、長寿や子孫繁栄を意味するものとして、縁起物とされてきました。鹿の子を布全体に隙間なく詰めて括ったものは、江戸時代より贅沢な衣服の代表として知られ、天和3年(1684年)に出された奢侈禁令に、金紗、繍と共に総鹿子が挙げられるほどでした。

※括る:”くく”ると呼びます。糸や布を糸などでかたく括り、染める方法をさします。絞りや絣などではよく使う漢字。上の写真は、弊社に残る半襟と思われるもの。少し荒い絞りだが、ゑり善と表現されている珍しいもの。年代不詳

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2024/09/11

夏の暑さが長引くこの頃ですが皆様お元気でお過ごしでしょうか。
いつもご覧いただきありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

今週末は京都本店にて秋の新作発表の会、「双美展」を開催いたします。
七五三やはたちのハレ着といった節目の祝い着に加え、染帯も特集させていただきます。

「染帯」といえば皆様はどのような印象をお持ちでしょうか。

普段着に合わせるもの…?
着物を一通りそろえた人が挑戦する、上級者向けの帯…?
季節の柄が多く、短い期間しか締めることができない…?

そんなことはありません。実は染帯は汎用性が高く、様々な場面でお使いいただける帯なのです。

今回は京都本店の双美展にさきがけ、染帯の愉しみ方をコーディネートとともにご紹介してまいります。
少しでも染帯を身近に感じていただけましたら幸いです。

 

~染帯とは~

帯の種類は代表的なものとして袋帯、なごや帯、袋なごや帯がございます。
柄の雰囲気にもよるので絶対に、とは言い切れませんがざっくり分けると袋帯が一番格の高いフォーマルなもの、なごや帯は準フォーマルからおしゃれもの、袋なごや帯はおしゃれ向けの帯です。

染帯はいわゆる「染めのなごや帯」です。白生地に柄を描き、染色していきます。
帯は染めより織りのほうが格が高いといわれますので、そこから考えると確かに染帯はおしゃれ向きの帯といえるでしょう。
ですから合わせるならば小紋や紬など、カジュアルな着物であれば格としては問題なくお召しいただけます。
しかしそれだけでなくフォーマル着物の入り口、色無地と合わせることもできます。

また柄ゆきに関して、季節のお花などが多くて限られた期間でしか締めることができない、という印象を持たれている方も多いと思います。
染帯、と一口にいっても柄ゆきは季節のものから幾何学的なものまで描かれていたり、染めだけでなく刺繍などの加工が施されていたり、生地も代表的な塩瀬と呼ばれる生地から紬の生地まであったりと様々です。

続いてはそんな染帯のいろいろをお伝えしながら、コーディネートをご紹介していきます。

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2024/08/30

いつも私たちのブログ「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ゑり善の亀井彬でございます。

暑かった8月もあっという間に過ぎ、朝夕の涼しい風に秋の訪れを感じる日々となってまいりました。明日からはいよいよ9月。台風など雨が少し心配なこの時期は、水にも強い麻の着物に袖を通しながらも、そろそろ単衣の着物へ…という気持ちになります。

さて今回のブログでは、お客様とのご縁が生まれる大切な場所、私たちにとっても大切な職場であるゑり善の”店舗”をご紹介いたします。
これまでの歴史も含めてご紹介いたしますので、普段からよくお越しになっていただく方には、”より深く”、まだ訪れたことがないというお方には、”より身近に”感じていただけましたら幸いです。

京都本店
私たちゑり善の歴史は京都、裏寺町蛸薬師で創業者である山崎善助(やまざきぜんすけ)が開業したところから始まります。天正12年、本能寺の変の2年後。1584年に産声を上げました。今からちょうど440年前のこととなります。その後時代は流れ、明治元年1865年に現在の四条河原町に進出をいたしました。

当時は座売りと呼ばれる畳に座り、腰を掛けた形でのお商売のスタイルが一般的でしたが、大正14年には、お客様も私たちも立ちながらお買い物ができるようにと、店の半分を改造しております。
また、昭和3年には河原町通の拡張に合わせて改築を行うなど、よりお客様とお話が弾むように度々店を改築していたようです。

しかし、昭和18年からは戦争の激しさが増し、物資不足にもなるなかで、営業ができない時期を迎えます。この間は中京衣料配給所に指定をされたと記録が残っております。
今でも昭和17年に商工省が発表した衣料品の点数表を資料として見ることできますが、15項目ある和服類は、洋服よりも先に書かれております。また男性のトンビコートと、背広が同じ50点と高いことから、この当時の着物という存在の大きさを知ることができます。

戦後は、絹の統制が外されるまでには時間がかかり、縁のあった6名で雑品などを扱いながら商いを再出発させました。

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2024/07/31

身も焼かれそうなほど日差しの強い日が続いておりますが、皆様おかわりなくお過ごしでしょうか。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

夏休みシーズンに入りました。公園などを通ると、お子様たちが元気に遊んでおります。
本店では店頭に七五三のお品物が並び始めました。
七五三の時期は11月ですが、お仕立ての期間もありますので9月頃までにお探しになる方が多くいらっしゃいます。
お子様が夏休みの間にお着物探しというのもいかがでしょうか。

お宮参りに始まり、七五三や成人式…日本人が大切にしてきた行事ごと。それぞれ由来があり願いが込められています。歴史までは知らずとも、そういった行事をすることで身の引き締まるような、喜ばしいような気持ちになることはあるのではないでしょうか。
七五三について、揃えるものなどは以前のブログにてご紹介させていただきましたので、今回はそういった「思い」のほうに焦点を当ててみたいと思います。

 

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2024/07/09

いつもゑり善のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただき誠にありがとうございます。
ゑり善の主人 亀井彬です。

今年令和6年は、梅雨入りが昨年と比べて23日も遅い6月21日となりました。
梅雨入り後は、湿度の高い蒸し蒸しとした日々が続いております。

京都の市街地は東山、北山、西山という三方を山に囲まれた盆地。そのため、風が弱くなるという地理的な特徴がございます。
このまとわりつくような暑さを体感すると、府外からお越しになられた方が、「京都駅に降りた瞬間の暑さが独特!」とおっしゃる理由がよくわかります。

さて、そんな暑い夏の京都の風物詩といえば、やはり「祇園祭」です。
「葵祭」・「時代祭」とあわせて京都三大祭と呼ばれている大切な祭。
また,大阪の「天神祭」・東京の「神田祭」と並んで日本三大祭の1つに数えられています。

7月1日の「吉符入」にはじまり、31日の「疫神社夏越祭」まで、1か月にわたって各種の神事や行事が行われていきます。
特に16日の宵山、17日の山鉾巡行は全国的に有名で、四条河原町の交差点で山鉾がゆっくりと向きを変える辻回しは多くの方にとって馴染みのある景色なのではないでしょうか。

■祇園祭が始まった訳…
さて、八坂神社の公式サイトを見ますと、

「古くは、祇園御霊会(ごりょうえ)と呼ばれ、貞観11年(869)に京の都をはじめ日本各地に疫病が流行したとき、勅を奉じて当時の国の数66ヶ国にちなんで66本の矛を立て、祇園社より神泉苑に神輿を送って、災厄の除去を祈ったことにはじまります。」
と書かれております。

長い歴史の中で幾度となく疫病の蔓延を経験してきた日本人。京都の地理的背景によって、暑さと湿気がもたらす疫病に対して、その原因を悪霊や鬼の仕業をみなし、祭礼によって追い出してしまおうという疫病対策が、長い歴史を経て、毎年の恒例行事となったものといえます。

記憶に新しい新型コロナウイルスの蔓延があった時にも、2020年・2021年の2年間が開催できなかった山鉾巡行について、2022年は全国的にも早い段階で実施が決定され、そのニュースが京都の街を明るくしたことを鮮明に記憶しております。

こうした歴史的背景に触れてみると、疫病に怯え守りを固めるだけでなく、祭礼という形で、多くの方の気持ちを結集させて、悪霊や鬼を追い出す!という攻めの気持ちが祇園祭を支えているように感じます。

■祇園祭の愉しみ方
そんな祇園祭の愉しみ方を今回はご紹介いたします。
京都の夏は暑くて… 人が多くて…
というお気持ちもとってもよくわかりますが、やはり実際に見て味わうことで生まれる感動はひとしお。
京都の街に繰り出して、夏を存分に愉しむ(できればお着物で…)きっかけになりましたら幸いです。

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2024/05/31

初夏とは思えない暑さが続きます。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

早いもので6月。衣替えの季節ですね。
お着物も袷の着物から、6月には単衣の着物にかわります。
呉服屋としては「単衣の着物は6月から」という基本的な情報をお伝えしたうえで…
この暑さですので、特に普段着としてお召しいただく際には気候に合わせた臨機応変な衣替えをお伝えさせていただいております。

衣替えを行ったら袷のお着物とは10月までしばしのお別れです。

 

さて、お着物をお召しになってから箪笥にしまうまでに、こんなお悩みを持ったことはないでしょうか。

着物が上手に畳めない…
しまい方があっているのかわからない…

今回はお着物をお召しになった後の流れの中で、お着物を綺麗な状態で保管していただくためにここはチェックしていただきたい!というポイントをご紹介していきます。
少しでも参考になりましたら幸いです。

 

~着物を干す~

お着物をお召しになった後は、簡単なシワを伸ばすために着物を着物ハンガーなどに一日程度かけておきます。
ついでに状態を確認しておきましょう。


写真1

上前、裾、衿、袖口は特に汚れやすい部分ですので、念入りにチェックします。(写真1)
また、雨の中お着物をお召しになった場合は、あらぬところに泥ハネなどがついている場合もありますのでさらなる注意が必要です。
シミや汚れが見つかった場合は早めにお手入れに出しましょう。

どれくらいの頻度でお手入れに出したらいいの?といったご質問を承ることもあります。
しばらく着用予定のないものはお召しになった後に、まだ着る予定のあるものはワンシーズンに一回のお手入れをおすすめしております。

衣替えの時期に合わせてお手入れに出すようにすると、長期間しまう前に綺麗な状態で保管できますし、うっかりお手入れのタイミングを逃してしまった、といったことも防ぎやすいと思います。
ちょうど今の時期に袷のお着物をお手入れしていただくとよいでしょう。

 

~着物をたたむ~

さて、簡単なしわ伸ばしと状態のチェックを終えたあとは、着物をたたんでいきます。

着物という独特な形容をしたお召し物、どのようにたたんでいったらよいのだろう…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、いざたたみ慣れてみると着物はコンパクトにたたむことができる優れものに思えます。
左右の衿や袖といった、同じところを合わせていくと綺麗にたたむことができますし、着物の裁ち方は四角形を基本としており無駄がないので、かさばるところもほとんど出ません。

「着物のたたみ方」を検索するとわかりやすく解説されているところがあるかと存じますので今回は割愛させていただき、呉服屋目線から、ここに気を付けたら着物を綺麗にたためる!というポイントをご紹介していきます。

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2024/05/11

いつもゑり善のブログ、「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ゑり善の亀井彬でございます。

ゴールデンウィークも過ぎ、初夏のさわやかな風が心地よい季節。
少しずつ進む季節の移ろいを感じております。

さて、今回のブログは前回に引き続き、竺仙さんの浴衣の特徴についてご紹介をいたします。
「夏に映える浴衣 ~涼やかを生む 竺仙さんの”こだわり”に迫る~」の第二弾をお届けします。

■毎年人気のこだわり浴衣…

竺仙さんの浴衣の特徴の一つが個性の際立つラインナップです。
前回ご紹介した王道の注染による綿コーマ、綿絽は浴衣らしく気軽にお召しいただけます。
→綿絽・綿コーマのご紹介

一方でもう少しドレスアップして、でも絹の着物まではいかないものを…
というお方におすすめなのが、今回ご紹介する「綿紅梅」や「奥州小紋」です。
まずはそれぞれの特徴をご紹介します。

■ 綿紅梅とは
“紅梅”という趣のある名前が印象に残る浴衣の生地。
太細のある綿の糸を織り分けて作られる細かな格子状の生地が特徴です。

格子状の太く見える部分には40番手の太い糸を、
薄く透き通って見える部分には80番手というより細い糸が使われています。
驚くことにこの生地が生まれたのは、昭和の初めとのことで、その時代のセンスの良さを感じます。

この織り方によって生まれる紅梅の生地は綿絽と比べてもすけ感があり、見た目にも涼やかです。
生地の凹凸のおかげで、肌触りもよく、着心地も抜群。
蝉の羽を思わせるような風合いは、夏の時期にぴったりです。

■ 奥州小紋とは
昭和30年代に”奥州小紋”と竺仙さんが名付けた浴衣。

生地には紬糸が使用され、独特の縦縞が特徴的です。
透け感は綿紅梅に比べると少ないため、柄のメリハリがしっかりとつきます。
生地そのものの色が真っ白ではなく、少し茶色がかっており、
お召しになった時にさりげなく目にとまる縦縞に江戸の”粋”を感じます。

紬糸を使用しておりますが、あつぼったい印象はなく、しゃきっとしたハリ感が着姿をより美しくします。

この2種類のタイプの異なる生地には、実は同じ技法での染めがなされています。
それが本日ご紹介する型置きと引き染の技法になります。

この度、竺仙さんのこだわりに迫るために訪れたのは東京の【千和多染工さん】でした。

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2024/04/05

いつもゑり善のブログ、「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ゑり善の亀井彬でございます。

心地よい春の日差しに美しい桜が舞う季節となりました。
入学式を迎える親御様の少し緊張した表情と共に、凛とした着物姿が街を彩っております。

さて、今回はこれからシーズンを迎える浴衣の特徴についてご紹介をいたします。
題して、「夏に映える浴衣 ~涼やかを生む 竺仙さんの”こだわり”に迫る~」です。

どうか、きものの愉しみを再認識するきっかけになりましたら幸いです。

■日本の衣服における大切な条件

着物という言葉は、「着る物」という意。
言葉の由来を考えると、日本の伝統的な民族衣装全体を表していることとなります。

そして、日本の衣装が、今日までどの様な変遷を遂げたかを知るには、日本の地理的条件を考えることが大切です。
私たちの祖先は、寒いとは言え、凍え死ぬほどの寒さでもない冬よりも、むしろ湿度の高く蒸し暑い夏をいかに快適に過ごすかという事に、いろいろな工夫を凝らしてきたようです。

壁の少ない風通しの良い部屋に住み、脇に開きのある大きな袖のついた衣服を前で軽く合わせて、帯を締めることによって少しでも夏を過ごしやすく考えたのでしょう。
一方で冬になると、取り外しの簡単な襖や障子で風を防ぎ、衣服を何枚も重ねることで寒さを防ぐ工夫をしてきたといえます。

その意味においては、当時と気温が異なっているとはいえ、暑い夏をいかにすずしく乗り切るか。という考えは、着物の誕生以来大切なテーマであったといえるのです。

■ 竺仙さんのこだわり
さて、弊社では毎年、東京日本橋の竺仙さんの浴衣を取り扱っております。

江戸・明治から伝わる型紙と職人さんの”鋭敏”な勘から生み出される美しい反物。
「竺仙鑑製」と染め抜かれた証紙にある「鑑」の一字には、手本になる、かがみ、また目利きなどの厳しい意味が込められています。

竺仙さんは江戸後期、1842年の創業。
江戸染浴衣の独特な技術を活かして、浴衣から江戸小紋へと世間に名を馳せ、歌舞伎の世界にまでその生きざまが描かれたほど。
いつの時代もものづくりにこだわり、新しい挑戦を続けておられる姿に染色の更なる成長と明るい未来を感じております。

そんな中でも今回は、竺仙さんといえば“コーマ!”
といえるほど、人気の定番商品であるコーマの浴衣のご紹介をいたします。

特に、「暑い夏をいかに涼しく乗り切るか」という大切なキーワードに対する価値として

①大胆かつ上品さを残す柄行き
②紺と白のコントラスト
③汗をかいたときにこそ涼しさを感じる生地

このの3つの点に注目をしてご紹介いたします。 (さらに…)

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」の代表取締役社長として働く「亀井彬」です。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできればと思い、日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。