京都の学生さんと見つめなおす”きものの愉しみ”
~箪笥に眠る物語(4)
こんにちは。同志社大学政策学部1回生の酒寄晃太と申します。
「First Year Program in KYOTO」にて、
ゑり善様にご協力をいただいておりますプロジェクト「箪笥に眠る物語」。
本日は第4回。最終回でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは、当プロジェクトのサポーターを務める、水上さんのエピソードです。
水上さんのお母様は、結婚するタイミングで、
おばあさま(水上さんのお母様のお母様)から訪問着をご用意していただいたそうです。
お母様は、それまで着物を着る機会はありませんでした。
成人式の際に、おばあさまから振袖代として…受け取りましたが
実際は旅行に行きたかったため、旅行代として使用されたそうです。
また、お母様は、まわりの人よりも早く結婚したため、友人の結婚式等でも着物を着る機会はありませんでした。
おばあさまが、「結局着物を着ることはできなかったから、結婚するなら1着くらい着物を贈りたい」と思い、
訪問着をおつくりになったそうです。
訪問着の色は淡い水色。赤色が好みのお母様にとっては、珍しい色のチョイスでした。
振袖ならば、迷わず赤にしていただろう…
けれど、長い間着れるものだから、少しおとなしめの色にするか…
まだ自分の年齢なら派手目の色でもいいかも…
と、悩みぬいて決めたそうです。
結婚式の後、初めて迎えるお正月の日。
お母様はご親戚のあいさつ回りのため、満を持して初めて着物に袖を通しました。
結婚式は、水上さんのご両親が学生時代を過ごした、京都でされたそうですが、
その際、式に呼ぶ親戚は、代表者1名のみ、とされていたようです。
そのため、正月の1日で、結婚式にご招待できなかった親戚の家をまわらなければなりませんでした。
美容師さんに着付けをしてもらった後は、日中あいさつ回りに奔走。
どの家に行ったかということさえ覚えていられないくらい、多くの家に行ったそうです。
着物は現在、父方のおばあさまの家の箪笥に眠っています。
お母様は、今回の思い出話を通して、改めて今、着物がどうなっているのか確かめたくなったそうです。
また、着物の状態がよければ、水上さん本人や兄弟に、ぜひ着てもらえれば、と言ってくれました。
エピソードが掘り起こされることによって、着物が引き継がれていく。本当に素晴らしいことですね。
次は私、酒寄のエピソードです。
残念ながら、手入れや保管が大変で処分してしまい、実物は残っていませんでしたが、着物にまつわるエピソードを話してくれました。
私の母方の祖母は、東北地方の出身です。
福島県の稲荷神社例大祭という、年に1度の大きな秋祭りのときにはよく着物を着ていたそうです。
着物を着るだけではなく、お化粧などのおめかしができたので、
とても新鮮で、お祭りの日にはいつも高揚感が湧いたそうです。
私は、祖母によく昔話を聞かせてもらうのですが、
着物のエピソードを聞いた際、いつもより話を鮮明に覚えており、とても驚きました。
「その祭りの時、○○君が~して…」など、
数十年以上も前の話にも関わらず、エピソードの詳細を事細かに話してくれました。
着物は想いを蓄えることが出来る。
そのことをあらためて認識することが出来ました。
また、それと同時に、着物のなにか大きなポテンシャルを感じました。
さて、4回にわたってご紹介させていただいた、「箪笥に眠る物語」。
いかがでしたでしょうか。
私たちも、他ではなかなかできないような、貴重な経験をさせていただきました。
着物が秘める魅力、これから先も広めていけたらと存じます。
ぜひ、このブログを読んでいただいている皆様も、今一度ご自宅にある着物に想いを馳せてみてください。
忘れかけていた、かけがえのない思い出が、掘り起こされるかもしれません。