京都の学生さんと見つめなおす”きものの愉しみ”
~箪笥に眠る物語(2)
こんにちは。
同志社大学政策学部1回生の酒寄晃太と申します。
「First Year Program in KYOTO」の講座にて、ゑり善様にご協力をいただいております、プロジェクト「箪笥に眠る物語」。
本日は第2回目です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はチームのリーダー、松浦さんのエピソードです。
まずは松浦さんのお母さまから。
成人式のときに着用していた振袖を見せていただいたそうです。
当時のお母さまは、普段はなかなか着る機会がないため、今までにない高揚感を覚え、早朝から1日中身に着けていたとか。
微笑ましいお話ですね。
女性が着物を着ると、普段とはまたひと味違った華やかさが出せるので、魅力的に感じる方が多いのではないかと存じます。
おばあさまから紹介していただいたのはお宮参りの着物で、
息子さん(松浦さんからみたら叔父)をご出産された際、ご実家から着物をいただきました。
それから年月がたち、息子さんにお子様が産まれた際、おばあさまの着物を着せました。
世代をまたいだ着物、歴史を感じます。
おばあさまによると、貸衣裳を着ることもできたそうですが、
昔から受け継いだものならではの品物の良さを感じ、引き継がせることを決められました。
着物は非常に高い技術が使われています。
定期的にお手入れをしていれば、ずっと使い続けることができます。
長い月日が経過しても高い質を保てる着物。
その技術の高さに圧倒されます。
松浦さん本人も、着物は染め直すなどして修復することで長く使うことが出来ることは素晴らしいと述べておりました。
エピソードは他にもございます。
松浦さんのおばあさまは、ひいおばあさまが亡くなった際に、桐箪笥を整理したところ、2つのものが見つかりました。
1つめは、ひいおじいさまの着物です。
松浦さんのひいおじいさまは、戦争のため、40歳ほどの若さで命を落とされたそうです。
おばあさまは、実際にひいおじいさまにお会いしたことはありませんでした。
しかし、見つかった着物を見て、ひいおじいさまに会えたかのような感覚を覚えました。
2つめは、ひいおばあさまが、嫁ぐ際に締められていた帯です。
その帯は両面に模様がある袋帯で、仕立屋に持っていき、袋帯を2つに分けてもらいました。
1つはひいおばあさまのお嬢様、もう1つは松浦さんのおばあさまが受け継ぎました。
これもまた、帯を見るとひいおばあさまのことを思い出すようです。
実際に見ただけでそのような感情が出てくるとは…。本当に驚愕しました。
私たちは、今回のプロジェクトを進めていく中で、ゑり善様からご教授していただき、学んだことがあります。
それは、“着物の価値はお金ではなく、そこに詰まっている想いである。”ということです。
もちろん、着物には上質な素材、高度な技術が使われています。
それが金額という形になって表れることは当然のことだと存じます。
しかしながら、着物の真の価値というのはそれだけではありません。
着物には、“想い”を蓄える力が備わっています。
その着物を着た人、作った人、さらにさかのぼれば、着物の素材となる糸を命がけで提供してくれる蚕。
生きとし生けるもの、これら全ての想いこそが最も重要な価値となるのです。
今まで深く考えたことがなかったお話でしたので、とても感銘を受けました。
着物が秘めている大きなポテンシャル、掘り下げていくほどすごく大きなものを感じます。
私たちがブログを書かせていただく機会はあと2回。少しでも着物の魅力をお伝えして、さらに、ご自宅にある着物に想いを馳せるきっかけにしていただけたらと存じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
同志社大学政策学部1回生 酒寄晃太