いつもゑり善のブログ”きものを愉しむ”をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
ゑり善の亀井彬でございます。
私たちゑり善は、天正12年、1584年に京染屋として商いを始め、襟地商(えりじしょう)としてのお手伝いをする中で、戦後からきもの全般を扱うようになりました。440年という歴史の中で、きもの自体は大きく形は変わらない中でも、様々な変化があって今に至ります。それは生活スタイルの変化によるものも大きく、その時代その時代で求められてきたものが変わってきた歴史でもございます。
今回は私たちが大切にお取り扱いを続けてきているお着物、”黒留袖”について、黒染めの歴史を中心にご紹介をさせていただきます。
特に近年ではご着用の機会は決して多いとはいえないお着物かもしれませんが、”黒”という色を活かした美しいお着物の代表格ともいえる黒留袖は、私たちにとっても大切なお品物の一つです。
■針も通りにくい黒
黒染めの歴史は古く、高貴な装束や法服などに用いられてまいりました。
もっとも古いと考えられる方法は墨を生地に付着させる方法であり、平安時代ごろから広く行われてきたとされています。
中世になると多くの武家が、競って黒の紋服を着用したと記されております。その理由は、”黒”というものが特に高尚優美であるという見た目だけでなく、羽二重や絹類を当時の檳榔子染で染め上げると、針も通りにくい程に強くなって、刃も容易に通らなくなった…という護身用という実用の意味もあったようです。
紋付や黒留袖など式服としての着物を考えると、多くの場合はその地色は黒に染められています。
こうした黒を染める仕事のことを黒染業といい、その他の色を染めるお仕事とは、別の業種として表現されるほど、黒は特殊な染の一つとされていました。