“色”を纏う
夏の暑さはどこへやら…急に寒くなってまいりました。
いつもご覧いただきありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。
お着物に興味を持ってくださっているお客様から耳にすることが多いのが「どんなものが自分に合うのかわからなくて…」というお言葉。
お着物選びって難しいですよね。顔映りの良さはもちろん、好きな色柄であること、着ていく場にふさわしい雰囲気であることなど、注目ポイントが様々ございます。
お着物選びが一筋縄ではいかない理由のひとつが“色数の多さ”ではないかと思います。
一見同じように見える色味でも濃さや明るさ、赤みがかっているか黄みがかっているか青みがかっているかなど微妙な差があるだけで、お顔に合わせたときの印象が大きく変わることもあります。
そこに柄の持つ雰囲気が加わると選択肢はいかようにも広がる、というわけでございます。
お客様にどんなお着物がお似合いになるか、販売員がいろいろとおすすめさせていただきながら一緒にお探しさせていただきたく思いますがお着物選びにハードルを感じておられる方は、柄はひとまずおいておき、まずはご自身にお似合いになる“色”を探すというのはいかがでしょうか。
今回はそんな“色”に焦点をあてたお着物、色無地のご紹介でございます。
~色無地の魅力~
色無地とは柄のない、一色に染められたお着物です。フォーマルかカジュアルかで比べるとフォーマルなお着物になりますが、紋の有無や合わせる帯の種類によって格調高くしたり少しおしゃれにしたり、幅広くお召しになることができます。
まずは特におすすめしたい色無地の良さをお伝えいたします。
〈選びやすさ〉
以前最初のお着物として小紋をご紹介させていただきましたが、色無地もきもの初心者さんにおすすめの一着です。
柄のない分“色”に集中して探すことができ、ご自身にはどんな色がお似合いになるのかわかることでその先々にお着物を探すときの指針にもなります。
〈合わせられる帯の幅広さ〉
お茶をされている方などは色無地に抜一ツ紋を入れて礼装としてお召しになる方もいらっしゃいますが、紋のない場合は普段のお出かけ着としてもお召しになれます。
また、紋入りの場合でも共色、お着物と同じような色味で縫一ツ紋をいれられるとさりげなく紋が入りますのでそちらもフォーマルな場面から普段のお出かけまでご着用いただけます。
写真の色無地は同じお着物になりますが、フォーマルな袋帯とカジュアルな染帯をそれぞれ合わせてみました。
袋帯のほうは春先の卒業式や入学式をイメージして。
付下げや訪問着など、入卒式にどんなお着物をお召しになるかは学校の雰囲気にもよりますが、あくまでお子様が主役となりますので色無地でひかえめにされるのも一つの選択肢だと思います。
色無地でも帯を合わせたらしっかりと格調高くなるようコーディネートいたしました。
染帯のほうは矢羽根の帯と合わせて。お正月のお出かけなどにいかがでしょうか。
染帯は普段でお召しになれる帯ですが、金銀が入るなどこれはフォーマルなのカジュアルなの…?と迷うような帯は特に色無地との相性が良いように思います。
~色無地を選ぶポイント~
さて、色無地について少し理解の深まったところで続いては実践編、色無地を選ぶ際のポイントをご紹介いたします。
〈生地を選ぶ〉
色無地は柄のないお着物、とお伝えしましたが実は生地に模様の入っている場合がございます。こちらは「地紋」と呼ばれますが、地紋があることで一反の中でも色の出具合に変化ができ、華やかな印象になります。
地紋のない場合は色そのものの持つ印象が強くなり、また、落ち着いた雰囲気でお召しいただけます。
地紋のあるなしどちらを選ぶかは一言で言えばお好みにはなりますが、地紋のあるお着物はお顔も明るく映りますのでパーティーで色無地をお召しになるような場合にもおすすめいたします。
地紋のないお着物はおしとやかな印象になりますので、流派などにもよりますがお茶など控えめが好まれる場面にはぴったりです。
〈色を選ぶ〉
さて、いよいよお似合いの色探しとまいりましょう。
入社して間もない頃、お着物について知るなかでひとつ驚いたことがございます。
それは、お着物は少し派手に感じるくらいの色目がちょうどよいということ。
自分にも反物をあてながら顔映りを学んでいたときのことでした。はじめはお洋服の感覚でくすみカラーのようなシンプルなものを選んでしまいがちでしたが、落ち着いた色目を選んでしまうと顔が沈んで見えることもございました。
反対に、見ているだけでも派手ではないかな…?と思えるような黄緑や濃いめの水色も、顔にあててみると馴染みがよいことも。
あてたときにお顔が明るく映る、お召しになる人の綺麗を引き立てるのもお着物の役割でございますので、少し華やかすぎるかな…?と思うような色も、ぜひ一度お顔に当ててみてご自身の表情をお確かめくださいませ。
自然から色をとったり「襲色目」と呼ばれる平安装束にはじまる色合わせがあったりしたように、日本人は古来より“色”を大切にしてきたように思います。それがお着物の繊細な色の違いにも表れているのではないでしょうか。
手首や裾までの長さにお袖の袂…お着物の形はお洋服と比べて布の面積も大きくなりますので、色の持つ雰囲気がお召しになる方の印象にも反映されやすいのでしょう。
ということはどのような雰囲気でお召しになりたいか、色を味方につけることもできます。
暖色か寒色かによってもお似合いになる色は変わってまいりますので、どのような色を纏いたいかもぜひ一度考えてみてくださいませ。
法事で色無地をお召しになる場合、浸染や引き染めといった色の染め方…など色無地に関してお話しできることはまだまだありますが、今回はこのあたりで。
ゑり善でもオリジナルの色無地をご用意しております。Instagramにてご紹介しておりますのでぜひそちらも併せてご覧くださいませ。
今年も残すところあとわずかとなりました。来年はどんなことに挑戦しましょうか。
来年こそはお着物を誂えたい…!と思ってくださっている方がいらっしゃいましたら、ぜひお手伝いできましたら幸いにございます。
私もブログを担当することになってから約2年経ちました。多少なりとも経験を積んだ分、お伝えできることも増えつつありますが、奥の深い着物の世界でまだまだ調べたり先輩に聞いたりしながら学んでいることがたくさんあります。
お客様からのご質問のおかげで自分では疑問に思えていなかったことに気づかされることもございます。そうして日々成長させていただいておりますので、気になることはどうぞ気兼ねなくお尋ねいただけますと幸いです。
今回も最後までお目通しいただき誠にありがとうございました。
皆様どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
本店営業・久保田真帆