自宅でできる 浴衣のお洗濯 その2
暑さの中にも、夏から秋への移ろいを感じられるようになってまいりました。
京都本店 店頭の廣政でございます。
前回のブログ「自宅でできる 浴衣のお手入れ その1」では
ご自身で浴衣をお洗濯される前に確認していただきたいことをお伝えしてまいりました。
大変お待たせいたしました、ここからはお洗濯の実践編でございます。
その1をまだ読んでいないという方はぜひ一度お目通しいただき、
さっそく浴衣のお洗濯を始めてまいりましょう!
目次
1.汚れ
(1) 汚れのタイプ
(2) 汗について
2.洗濯する前に
(1) 自宅で洗える浴衣の種類
(2) 洗濯前の色落ちチェック
3.洗い方
(1) 予洗い
(2) 全体洗い
(3) 脱水
(4) 干し方
4.保管方法
5.着用時に汚れがついたときの対処法
6.ちょっと気になるQ&A
3.洗い方
ここからは洗剤を使用しますので、ゴム手袋などで手を保護しつつ行ってください。
(1) 予洗い
まず大切なのは特に汚れが気になる部分を予洗いしておくこと。
全体を洗う前に、目立つ汚れは洗っておきましょう。
特に首回りは黄ばみが起こりやすいので、ポイント洗いをします。
せっけんや中性洗剤をつけて、歯ブラシなどで優しくこすって汚れを落としてください。
泡タイプの部分洗い洗剤やアルカリ電解水も有効です。
このポイント洗いで落ちない汚れは、専門店へ出してください。
長期間放置されていた汚れなどは生地が弱っている可能性がありますので、
破れてしまったり穴が開いたりすることがあるそうです。
いつ付いたのか分からない古い汚れの場合も専門店へ出しましょう。
ポイント:汚れやすい首回りなどはポイント洗いを!
汚れが定着している状態でこすったりすると、生地が傷んでしまうので注意!
(2) 全体洗い
次に全体を洗っていきます。
浴衣を洗濯するときの注意点は「水で洗うこと」と「濡れたまま放置しないこと」です。
まず「水で洗う」というのは、お湯ではなく常温の水を使うという意味です。
お湯を使うと色落ちの原因となりますので、必ず常温の水をお使いください。
次の「濡れたまま放置しないこと」。
これも色落ち、色移りの原因となります。
乾いた布同士を合わせても染料はうつりませんが、
濡れた布同士をくっつけると染料がにじんでうつっていく…と、イメージしていただけますでしょうか。
以上を踏まえたうえで浴衣を全体洗いしていきましょう。
予洗い、ポイント洗いが終わったら、型が崩れないようたたんだまま洗濯用ネットに入れます。
このときなるべく生地への摩擦負担を少なくするため
大きめのバスタオルに浴衣をはさみ、ネットに入れてもよいです。
使用する洗剤は洗濯用の中性洗剤です。
おしゃれ着用のものを使うと、摩擦によるダメージを減らすことができます。
洗剤はたくさん入れれば入れるほど効果がありそう!と一見思ってしまいがちですが、
たくさん入れたからといって汚れがよく落ちるわけではありません。
適量の洗剤を使用しましょう。
洗濯機のコースはドライやソフトなどを選択してください。
ドラム式の洗濯機をお使いの場合には、浴衣1枚だけを洗おうとすると
洗濯物が片寄ってエラーが出てしまうことがあります。
気付かないうちにエラーになって、浴衣が濡れたままの時間が長くなってしまうと色移りの原因に。
ドラム式で浴衣を洗濯するときには一緒にバスタオルを何枚か洗濯して片寄りを減らしたり、
脱水をかけないなどで対応できます。
洗いとすすぎが終わりましたら、お好みで洗濯のりを使用されるとパリッとした仕上がりになります。
のり付けは必須ではありませんので、お好みに合わせてお選びください。
また、乾いたあとアイロンをあてる際にスプレータイプののりを使用してもよいでしょう。
ポイント:常温の水で洗う・濡れたまま放置しない!
型崩れしないように洗濯ネットに入れ、ドライまたはソフトコースで優しく洗う!
(3) 脱水
浴衣は必ずしも脱水をしなくても大丈夫だそうです。
脱水する/しないで分けるとするならば…
・柄がなく色落ちしないものは脱水しなくてもよい。
・反対に、柄があるもの・色落ちするものは軽く脱水をかける、とのこと。
脱水せずに干すメリットは、水は重力に従って下に落ちようとするため、
その重みでピンとしたシワの少ない仕上がりとなります。
ただし色落ちがしやすいものの場合、水分をたくさん含んだ状態で干してしまうと
染料が下に垂れていってしまいます。
浴衣を洗濯するときの注意点「濡れたまま放置しないこと」ですね。
洗濯機で脱水するときは1分~1分強程度にしましょう。
湿っているくらいがちょうどよいです。
ポイント:色落ちしないものは脱水しなくてもよい
色落ちするものは洗濯機で1分~1分強程度脱水をする!
(4) 干し方
浴衣を洗濯して干すとき、もしお持ちであればきものハンガーをご使用ください。
きものハンガーがない場合には洋服用ハンガーもお使いいただけます。
ただし、濡れた状態の生地が極力くっついてしまわないようにご注意ください。
浴衣は洋服に比べて丈が長いので、床についてしまわないよう高いところに干せるとベストです。
手でパンパンと伸ばしながら形を整えたら、直射日光が当たらない風通しの良いところに干しましょう。
扇風機の風を当てることで、生地の密着を防ぎつつ早く乾かすことができます。
ポイント:濡れた状態で生地がくっつかないように注意!
直射日光を避け、風通しの良いところに干す!
4.保管方法
洗濯も無事に終わりました。
さて来年までタンスに入れておこう…というとき、どうやって保管しておくのが最善なのでしょうか。
絹のきものや帯はたとう紙に入れてタンスへしまっているという方が多いかと思います。
絹は呼吸をするとよく言いますが、これは吸湿性・通気性に優れていることを例えたものです。
絹のきものをたとう紙に長期間入れていたら、紙のほうが先に変色してきます。
ですので、たとう紙の変色をもって中のきものをチェックすることができます。
一方、綿の生地は絹と比べて通気性が悪く、よりカビが生えやすい繊維です。
たとう紙が変色する前に中の浴衣が変色してしまうことがあるため、こまめなチェックが必要です。
浴衣の保管方法としては、通気性の良いところに入れること。
ほこりが被らない程度に風呂敷に包んだり、布を掛けておくとよいでしょう。
空気がこもりきりにならないように、時々タンスの引き出しを開けて空気の入れ替えをしてください。
たとう紙で保管する場合にも、シーズンごとにタンスを開けて風を通し点検をしましょう。
また、汚れが付いたままにしておくと虫食いの原因ともなりますので、
ワンシーズン着用したらお手入れをしてからしまうようにしましょう。
ポイント:風呂敷に包む、たとう紙に入れるなど、ほこりが被らないように保管する
時々タンスの引き出しを開けて空気の入れ替えを!
5.着用時に汚れがついたときの対処法(屋台ver.)
浴衣で夏祭りに行くと、やはり魅力的なのは屋台の食べ物。
気を付けていたけれど、浴衣にうっかり食べ物をこぼしてしまった…!
という経験がおありの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、屋台の食べ物を中心にそれぞれの対処法をまとめてみました。
●かき氷のシロップ●
液体がたくさんかかったときには、こすらないようにハンカチで押さえて水分を吸わせましょう。
シロップは水溶性の汚れですので、ドライクリーニングをしても汚れを落とすことができません。
ご自身で処置される場合には酸素系漂白剤や台所用洗剤が有効です。
漂白剤を使用される場合は色が抜けてしまう可能性がありますので、
目立たないところでテストされるとよいでしょう。
実は私自身、白地の浴衣にかき氷のいちごシロップを落としたことがあります。
その時は洗剤をつけて一生懸命ゴシゴシとつまみ洗いしたため、浴衣の染料がにじんでしまい
悉皆屋さんにお願いして直していただきました。
ゴシゴシ洗いは絶対にしてはいけないと、身をもって体験した苦い思い出でございます。
●お酒●
赤ワインはついた部分が赤~紫色になるのでこぼしても分かりやすいですが、
日本酒や白ワインなどは無色のため乾いてしまうと汚れがわかりにくくなります。
ですが、お酒には糖分が含まれています。
そのときは汚れに気が付かなくても後で浮き出てくる、時限爆弾のようなものだそうです。
覚えているうちに処置しておきましょう。
こぼしてしまったときは、ハンカチなどで上から押さえて水分を取ります。
おしぼりなどでゴシゴシしてしまわないようご注意ください。
お酒は水溶性の汚れなので、中性洗剤で落とします。
汚れが落ちない場合には専門店に出しましょう。
●ソース系●
ソースのかかっているたこ焼きやお好み焼きは水溶性と油溶性の混合タイプであることが多いため、
水だけでは落とすことができません。
水と油の対処法にも順番があり、先に水で洗ってしまうと油の汚れが取れなくなってしまうそうです。
こういった複雑な汚れの場合はご自身で処置をせず、専門店に出すことをおすすめいたします。
●唐揚げ●
コロコロと浴衣の上を転がった程度の汚れであれば、ベンジンで落とすことができます。
ベンジンを使用するときには必ず換気をしながら行います。
揮発性・引火性が高いものですので火気厳禁です。注意事項をよく読んで使用しましょう。
ポイント:汚れがついてしまったら早めの対処を!
放っておくと汚れは取れにくくなるため、専門店に出すこと!
6.ちょっと気になるQ&A
ここからは浴衣の選択に関しての「ちょっと気になること」たちをQ&A方式でご紹介していきます。
Q.肩揚げや腰揚げをしている子供用の浴衣でも自宅で洗濯できますか?
A.お子様用の浴衣もご自宅でお洗濯ができます。
ただし、揚げの部分は生地が重なっている状態になっていますので脱水をかけましょう。
ドライヤーや扇風機の風を当てて生地が重なる部分だけでも乾かすと、より安心です。
Q.浴衣に居敷当などの裏地が付いている場合は自宅で洗濯できますか?
裏地だけが縮んだりすることはありますか?
A.裏地が付いていてもご自宅でお洗濯ができます。
表地と裏地で縮み具合が違ってくることはほとんどありません。
裏地が麻の場合、アイロンをあてて伸ばしてあげれば元のサイズになります。
小千谷縮等の凹凸のある生地は、吊り下げながらスチームをかけられるタイプの
アイロンがおすすめです。
Q.浴衣を洗う頻度はどのくらいが良いのでしょうか?
A.夏の間に浴衣を着て、ワンシーズン終わったら洗濯する程度で大丈夫です。
もちろん1回着たら洗いたい、という方はそれでも問題ありません。
浴衣を干しておいたら汗が抜けると思っている方もおられますが、
水分だけが無くなり不純物はそのまま残っている状態です。
シーズンが終わったら必ずお手入れをして、きれいな状態でしまいましょう。
また、汚れが付いてしまったときはなるべく早くお手入れに出すことです。
汚れてしまったからといってすぐに専門店へ出す人は実はあまりおらず、
汚れが進行してから気付いて出すことが多いのです。
ワンシーズン置いておく間に汚れはどんどん定着し、進行してからだと処置が難しくなります。
汚れた時はすぐにお手入れに出すこと!
そうすれば簡単に汚れも落とせますし、費用も安く抑えることができます。
Q.麻の浴衣を洗うときの注意点やポイントなどはありますか?
A.麻は洗濯用中性洗剤で洗うとアクが取れて柔らかくなる場合があります。
ハリのあるほうがお好みでしたら、最初は流水だけで洗うほうがよいです。
また、麻などのアイロンしにくいものは、半乾きの状態で吊るしたまま
スチームアイロンを使うのが効果的です。
細かい霧吹きで湿らせながらアイロンしましょう。
ここまでたくさんの情報をお伝えしてまいりましたが、皆様いかがでしたでしょうか。
この夏浴衣をお召しになり、これからお手入れをしようと思っておられる方。
また、今年は浴衣を着る機会が無かった、あるいはもうお手入れが終わられた方にも
少しでもお役立ていただけましたら幸いでございます。
最後に、今回の取材にご協力いただきました悉皆屋さまに心より感謝申し上げます。
※浴衣のことでお困りごと・ご相談がございましたら、お気軽にゑり善にお問い合わせくださいませ。
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